交通事故に遭ってから手足にしびれが残り、日常生活に不安を感じている方は少なくありません。しびれは見た目では分かりにくい症状であるため、周囲に理解されにくく、どのように対応すればよいか迷ってしまうことも多いものです。この記事では、交通事故によって手足にしびれが生じる原因や考えられる傷病名、後遺障害等級として認定される可能性、そして慰謝料請求における具体的なポイントや注意点まで幅広く解説しています。最後まで読むことで、しびれという症状にどう向き合い、適切な補償を受けるために何をすべきかが分かるようになります。
1. 交通事故で手足にしびれが生じる原因とは
交通事故に遭った後、手や足にしびれを感じるという訴えは非常に多く見られます。追突や衝突の衝撃は一瞬であっても、身体の内部では神経や骨格、筋肉に大きな負担がかかっており、その影響が数日から数週間経ってから表面化することも珍しくありません。ここでは、交通事故後にしびれが起こる主な原因について、身体の構造に基づきながら詳しく解説していきます。
1.1 神経損傷によるしびれのメカニズム
手足のしびれは、多くの場合神経が何らかの形で圧迫されたり引き伸ばされたりすることで生じる感覚異常です。神経は脳から脊髄を通り、背骨の隙間から枝分かれして手や足の末端まで伸びています。交通事故のような強い衝撃が加わると、この神経の通り道にあたる骨や椎間板、周囲の筋肉や靭帯に微細な損傷が起こり、神経が圧迫を受けることがあります。
神経が圧迫されると、電気信号の伝達がうまくいかなくなり、脳に届く感覚情報が変化します。その結果、じんじんとした違和感やピリピリとした刺激感、あるいは感覚が鈍くなるような状態として自覚されるのです。事故直後は興奮状態にあるため気づきにくく、時間が経ってから症状が現れるケースも多く見られます。
しびれが出る部位によって、どの神経が影響を受けているかをある程度推測することができます。以下の表は、しびれが出やすい部位と関連が深いとされる神経の対応をまとめたものです。
| しびれの部位 | 関連が深いとされる神経 | 背景となりやすい部位 |
|---|---|---|
| 親指から中指にかけての手指 | 正中神経 | 手首や頸部 |
| 小指側の手指 | 尺骨神経 | 肘や頸部 |
| 太もも前面から膝 | 大腿神経 | 腰部 |
| 足の裏からふくらはぎ | 坐骨神経 | 腰部から臀部 |
このように、しびれが出ている場所と身体の構造を照らし合わせることで、どの部位に負担がかかっているかを把握する手がかりになります。
1.2 むちうちが引き起こす手足のしびれ
追突事故などで首が前後に大きく振られることで生じる、いわゆるむちうちは、手足のしびれの原因として最も多く挙げられるものの一つです。首は頭部という重量のある部位を支えながら、大きな可動域を持つ非常に繊細な構造をしています。事故の衝撃によって頸椎の周囲にある筋肉や靭帯、関節包に炎症が起こると、その炎症が神経の通り道である椎間孔を狭めてしまうことがあります。
むちうちによるしびれは、首から肩、腕、そして手指へと広がっていく傾向が見られます。首を後ろに反らしたり、しびれのある側に傾けたりすると症状が強まるという特徴があり、日常生活における姿勢や動作によって症状の強弱が変化しやすいことも一つの目安になります。
また、むちうちは骨や神経そのものに明確な損傷が見られない場合でも、周囲の軟部組織の炎症や筋緊張によって神経が圧迫を受け、しびれとして自覚されることが多くあります。そのため、画像検査で異常が見つからないからといって、しびれの原因がないというわけではない点に注意が必要です。
1.3 脊髄損傷や神経根症状によるしびれ
むちうちのように比較的軽度な神経への影響とは別に、より重篤な状態として脊髄そのものや神経根に損傷が及ぶケースがあります。脊髄は背骨の中を通る中枢神経であり、ここに強い衝撃が加わると、手足の広い範囲にわたって深刻なしびれや麻痺が生じることがあります。
神経根症状とは、脊髄から枝分かれした神経根が、骨や椎間板の変形、あるいは事故による衝撃で圧迫を受けることによって起こる症状を指します。この場合、しびれは特定の神経が支配する範囲に沿って現れることが多く、手や足の特定の指先まで症状が及ぶといった特徴的な広がり方をすることがあります。
脊髄や神経根への影響が疑われる場合には、しびれ以外にも筋力の低下や、細かい動作がしづらくなるといった症状を伴うことがあります。こうした症状は時間の経過とともに悪化する可能性もあるため、事故後は自覚症状の変化を注意深く観察し、身体の状態を記録しておくことが大切です。しびれの範囲や強さ、出現するタイミングを把握しておくことは、後の経過を振り返る上でも重要な情報となります。
2. 交通事故後の手足のしびれで考えられる主な傷病名
交通事故に遭った後に手足のしびれを感じる場合、その背景にはいくつかの傷病が関係していることが多くあります。しびれという症状は一つの疾患だけで起こるものではなく、首や腰の骨格の歪み、神経の圧迫、末梢神経そのものの損傷など複数の要因が絡み合って生じることが少なくありません。ここでは交通事故後に手足のしびれを引き起こす代表的な傷病名について、それぞれの特徴を整理していきます。
2.1 頸椎捻挫と神経症状
追突事故などで首に強い衝撃が加わった場合、頸椎捻挫と呼ばれる状態になることがあります。頸椎捻挫は一般的にむちうちと呼ばれる症状の一種で、首の骨を支える筋肉や靭帯が損傷を受けることで発生します。首の痛みや可動域の制限だけでなく、頸椎の周辺を通る神経が刺激を受けることで、腕や手先にしびれが広がるケースも珍しくありません。
頸椎捻挫による神経症状は、事故直後にはっきりと現れないこともあり、数日から数週間経ってから徐々に自覚するお客様も見受けられます。首から肩、腕、指先へと放散するようなしびれや、握力の低下を伴う場合は、頸椎周辺の神経が何らかの影響を受けているサインとして注意深く経過を見ていく必要があります。
2.2 腰椎捻挫と坐骨神経痛
腰椎捻挫は交通事故の衝撃によって腰の骨や周辺の筋肉、靭帯に負担がかかることで起こる症状です。腰椎捻挫が進行すると、腰椎から伸びる神経が圧迫を受け、坐骨神経痛として知られる症状に発展することがあります。坐骨神経は腰から臀部、太もも、ふくらはぎ、足先まで続く体の中でも特に長い神経であるため、圧迫を受ける部位によってしびれの出る範囲や強さが大きく異なる点が特徴です。
腰椎捻挫による坐骨神経痛では、片側の足だけにしびれが出ることが多く、長時間座っている姿勢や体をひねる動作で症状が強まる傾向があります。歩行時に足に力が入りにくいと感じる場合や、足の裏の感覚が鈍くなっていると感じる場合は、坐骨神経への影響が広がっている可能性も考えられます。
2.3 末梢神経損傷
交通事故の衝撃が直接的に神経そのものに及ぶことで、末梢神経損傷と呼ばれる状態になることもあります。末梢神経は脳や脊髄から枝分かれし、体の隅々まで情報を伝える役割を担っているため、損傷を受けた部位に応じてしびれや感覚異常、筋力低下といった症状が現れます。
末梢神経損傷は、骨折や脱臼に伴って神経が圧迫されたり引き伸ばされたりすることで生じる場合もあれば、事故の衝撃によって神経そのものが直接傷つく場合もあります。症状が軽度であれば時間の経過とともに回復していくこともありますが、損傷の程度によっては長期にわたってしびれや感覚の異常が残ることもあるため、経過の観察が重要になります。
| 傷病名 | 主な原因 | しびれが出やすい部位 |
|---|---|---|
| 頸椎捻挫 | 追突などによる首への衝撃 | 肩、腕、手先 |
| 腰椎捻挫と坐骨神経痛 | 腰への負担による神経圧迫 | 臀部、太もも、ふくらはぎ、足先 |
| 末梢神経損傷 | 骨折や脱臼に伴う神経の圧迫、直接的な損傷 | 損傷部位より末端側の広い範囲 |
このように、交通事故後の手足のしびれにはさまざまな傷病が関係しており、症状が現れる部位や強さもそれぞれ異なります。自覚している症状がどの傷病に由来するものかを見極めることが、その後の経過や体の状態を把握するうえで大切な手がかりとなります。事故直後には軽微に感じられる症状であっても、時間の経過とともに変化することがあるため、体の変化には日頃から注意を払っておくことが望ましいといえます。
3. 手足のしびれは後遺障害に認定されるのか
交通事故によって生じた手足のしびれが、そのまま後遺障害として認定されるとは限りません。しびれという症状は本人にしか自覚できない性質を持つため、周囲の人が客観的に確認することが難しく、認定にあたっては症状の裏付けとなる医学的な所見や検査結果が重視される傾向があります。ここでは、後遺障害等級の種類や認定基準、しびれが後遺障害として認められるために必要な条件について整理していきます。
3.1 後遺障害等級の種類と認定基準
後遺障害等級は、症状の重さや残存する障害の内容に応じて1級から14級までに区分されています。手足のしびれのような神経症状の場合、多くのケースで12級13号または14級9号のいずれかに該当するかどうかが争点となります。両者の違いは、しびれの原因を裏付ける医学的な所見の有無と、その程度によって分けられています。
| 等級 | 認定基準の概要 | 求められる所見の目安 |
|---|---|---|
| 12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 画像検査による異常所見と神経学的検査の結果が一致していること |
| 14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 画像検査での明確な異常所見はないが、自覚症状に一定の連続性・一貫性が認められること |
3.1.1 12級13号に該当するケース
12級13号は、しびれの原因が画像検査によって客観的に確認できる場合に認定される可能性が高くなります。たとえば、頸椎や腰椎の骨折、椎間板の突出、神経根の圧迫などが撮影画像から明らかであり、その部位と症状が出ている手足の範囲が医学的に整合している場合です。加えて、腱反射の低下や筋力低下、感覚検査での異常など、神経学的検査の結果が画像所見と一致していることも重要な判断材料になります。単に痛みやしびれを訴えるだけでなく、複数の検査結果が同じ方向を示していることが求められます。
3.1.2 14級9号に該当するケース
14級9号は、画像検査で明確な異常が見つからない場合でも認定される可能性がある等級です。むちうちのように骨や神経に直接的な損傷が確認できないケースでも、事故直後から症状固定に至るまで一貫してしびれや痛みを訴え続けていること、通院を継続していること、症状の内容や部位に矛盾がないことなどが判断のポイントになります。自覚症状の一貫性と通院の継続性が、この等級の認定において特に重視される部分です。
3.2 しびれが後遺障害と認められるための条件
手足のしびれを後遺障害として認めてもらうためには、いくつかの条件を満たしておく必要があります。まず、事故直後から症状が継続していることを示す通院記録が欠かせません。事故から時間が経ってから通院を始めたり、通院が途中で長期間空いてしまったりすると、事故との因果関係が疑われやすくなります。
次に、しびれの部位や性質が一貫していることも重要です。診察のたびに症状の内容が変わってしまうと、症状固定時の診断書に矛盾が生じ、審査において不利に働くことがあります。日頃からしびれの出る場所や強さ、どのような動作で悪化するかを記録しておくと、後の診断書作成や審査の際に役立ちます。
さらに、神経学的検査や画像検査など、複数の検査結果が総合的に症状を裏付けているかどうかも認定の分かれ目になります。しびれという主観的な症状であっても、腱反射や筋力、感覚に関する検査結果が伴っていれば、審査においてより説得力のある資料となります。日常生活で感じている症状の変化を軽視せず、継続的に記録し伝えていく姿勢が、後遺障害認定に向けた大切な準備につながります。
4. 後遺障害等級認定を受けるための手続きの流れ
交通事故による手足のしびれについて後遺障害等級認定を受けるためには、いくつかの段階を踏む必要があります。手続きの流れを正しく理解しておくことで、症状に見合った等級認定を受けられる可能性が高まります。ここでは症状固定のタイミングから申請方法、診断書の記載内容まで、手続きの各段階について詳しく解説していきます。
4.1 症状固定のタイミングと診断書の重要性
後遺障害等級認定の手続きにおいて、まず重要になるのが症状固定のタイミングです。症状固定とは、それ以上施術を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を指します。手足のしびれの場合、しびれの程度に波があったり、通院の経過によって症状の出方が変化したりすることも多いため、症状固定の時期を見極めることが簡単ではありません。
症状固定と判断される時期が早すぎると、十分な通院記録や検査結果が蓄積されないまま手続きに進んでしまい、後遺障害の存在を裏付ける資料が不足する恐れがあります。一方で、必要以上に通院を続けても、症状が改善しない状態が続いていれば、保険会社との交渉において症状固定を促されることもあります。一般的に、むちうちに伴う手足のしびれについては、受傷から半年程度が症状固定の目安とされることが多いですが、症状の経過や通院状況によって前後することがあります。
症状固定の時期が近づいてきたら、それまでの通院で記録されてきた診断書の内容が非常に重要な意味を持つようになります。通院期間中に作成される診断書には、しびれの症状やその変化、行われた検査の結果などが記載されており、これらの記録が後遺障害等級認定の審査における基礎資料となります。通院の初期段階からしびれの症状を継続的かつ具体的に伝え、診断書に反映してもらうことが、後の等級認定手続きを有利に進めるための土台になります。
4.2 被害者請求と事前認定の違い
後遺障害等級認定の申請方法には、大きく分けて「事前認定」と「被害者請求」の2つの方法があります。それぞれ手続きの主体や必要な労力、資料の扱い方に違いがあるため、事前に特徴を理解しておくことが大切です。
| 項目 | 事前認定 | 被害者請求 |
|---|---|---|
| 手続きの主体 | 相手方の任意保険会社 | 被害者本人 |
| 手間のかかり方 | 比較的少ない | 書類収集など手間がかかる |
| 提出資料の調整 | 被害者側で内容を確認しにくい | 有利な資料を追加できる |
| 結果が出るまでの期間 | 保険会社の対応に左右される | 自身の準備状況に左右される |
事前認定は、相手方の任意保険会社が後遺障害等級認定に必要な書類の取りまとめから提出までを代行してくれる方法です。被害者自身の手間は少なく済みますが、保険会社がどのような資料を添付して申請したのかを把握しにくいという側面があります。手足のしびれのように他覚的な所見が乏しく、等級認定が難しいとされる症状の場合、事前認定のみでは十分な主張ができないまま結果が出てしまうこともあります。
一方の被害者請求は、被害者自身が必要書類をすべて揃えて自賠責保険に直接申請する方法です。書類収集の手間はかかりますが、しびれの症状を裏付ける検査結果や日常生活における支障を具体的に記載した書類など、等級認定に有利となる資料を自身の判断で追加できる点が大きな特徴です。手足のしびれのように症状の証明が難しいケースでは、被害者請求によって主体的に資料を整えることが、適切な等級認定につながりやすいとされています。
4.3 後遺障害診断書に記載すべきポイント
後遺障害等級認定の審査において最も重視される書類が後遺障害診断書です。この診断書は、症状固定時点における身体の状態をまとめたもので、通院先で作成してもらう必要があります。手足のしびれについて適切な等級認定を受けるためには、診断書にどのような内容が記載されているかが極めて重要な意味を持ちます。
診断書に記載すべき主なポイントとしては、しびれが生じている部位とその範囲、しびれの程度や性質、持続性の有無、日常生活のどのような場面で支障が出ているかといった内容が挙げられます。また、神経学的検査の結果や画像検査で確認された所見がある場合には、それらも具体的に記載してもらうことが望ましいとされています。
| 記載項目 | 具体的な内容の例 |
|---|---|
| 自覚症状 | しびれの部位、範囲、頻度、誘発される動作など |
| 他覚的所見 | 神経学的検査の結果、画像検査で確認された異常 |
| 日常生活への影響 | 物をつかみにくい、長時間の歩行が難しいなど具体的な支障 |
| 今後の見通し | 症状が持続すると考えられる根拠 |
しびれという症状は本人にしか感じられないものであるため、抽象的な表現にとどまらず、具体的なエピソードとともに伝えることが診断書の内容を充実させることにつながります。例えば「指先がしびれる」だけでなく、「細かい作業がしづらくなった」「長時間立っていると足のしびれが強くなる」といった具体的な状況を伝えることで、日常生活における支障の程度が診断書に反映されやすくなります。
また、通院の経過を通じて一貫した症状の訴えが記録されていることも、診断書の信頼性を高める要素となります。通院のたびにしびれの状態を丁寧に伝え、経過が矛盾なく記録として積み重なっていくことが、後遺障害等級認定の手続き全体を通じて重要な意味を持ちます。
5. 手足のしびれで請求できる慰謝料の種類と相場
交通事故による手足のしびれで請求できる金銭的な補償には、いくつかの種類があります。それぞれ算定方法や基準が異なるため、どのような補償が受けられるのかを正しく理解しておくことが大切です。ここでは入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益という三つの補償について、それぞれの考え方と相場を確認していきます。
5.1 入通院慰謝料の計算方法
入通院慰謝料とは、事故によるけがで通院や入院を余儀なくされたことに対する精神的な苦痛への補償です。手足のしびれの症状で通院を続けた場合、その期間や回数に応じて金額が変わってきます。
入通院慰謝料の算定には主に二つの基準があり、どちらを用いるかによって金額に大きな差が出ることがあります。一つは自賠責保険で用いられる基準で、もう一つは裁判で用いられる基準です。自賠責基準では、一日あたりの金額に対象日数を掛けて算出しますが、対象日数は実際に通院した日数を二倍にした数と、入通院期間そのものを比較して少ない方が採用されます。一方、裁判基準では通院期間そのものを基準にした表があり、同じ通院期間であっても自賠責基準より高い金額になる傾向があります。
| 算定基準 | 考え方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 自賠責基準 | 一日あたりの金額に対象日数を掛けて算出 | 最低限の補償を目的としているため金額は低めになりやすい |
| 裁判基準 | 入通院期間に応じた表を用いて算出 | 過去の裁判例を踏まえた基準で、自賠責基準より高くなる傾向がある |
むちうちなど比較的軽度とされる症状の場合、裁判基準の中でも軽傷用の表が使われることが多く、他覚的な所見が乏しいしびれの症状ではこの点が慰謝料額に影響を与えることがあります。
5.2 後遺障害慰謝料の等級別相場
症状が治まらずに後遺障害として認定された場合には、後遺障害慰謝料を請求できます。こちらも自賠責基準と裁判基準で金額が異なり、認定された等級によって相場が大きく変わる点が特徴です。
| 後遺障害等級 | 自賠責基準の相場 | 裁判基準の相場 |
|---|---|---|
| 12級13号 | 約94万円 | 約290万円 |
| 14級9号 | 約110万円 | 約110万円 |
表のとおり、12級と14級では自賠責基準と裁判基準の差に大きな違いがあります。特に12級では二つの基準の差が大きく開くため、どちらの基準で交渉を進めるかによって受け取れる金額が大きく変わってきます。裁判基準はあくまで目安であり、実際の交渉では個々の事情によって金額が上下することもあります。
5.3 逸失利益の考え方
逸失利益とは、後遺障害が残ったことによって将来の収入が減少すると見込まれる分を補償するものです。手足のしびれが後遺障害として認定された場合、しびれによって作業効率が落ちたり、力仕事が難しくなったりすることを踏まえて算定されます。
逸失利益は、事故前の収入を基準とした金額に、労働能力がどの程度失われたかを示す割合と、その影響が続くと見込まれる期間に応じた係数を掛け合わせて算出します。労働能力を失った割合は等級によっておおよその目安が定められており、14級では5パーセント程度、12級では14パーセント程度とされることが一般的です。
また、影響が続く期間についても、症状の内容や年齢などを踏まえて判断されます。しびれのような神経症状は、他の後遺障害と比べて労働能力への影響の程度や期間の判断が難しいとされることがあり、この部分が交渉の中で争点になりやすい傾向があります。事故前の仕事内容によっても影響の大きさが変わってくるため、しびれの症状が日常の作業にどのように影響しているかを具体的に伝えることが重要になります。
6. 手足のしびれの慰謝料請求で注意すべきポイント
6.1 症状固定前に示談しないこと
手足のしびれが残っている段階で保険会社から示談の打診を受けることがありますが、症状固定の前に示談を結んでしまうと、その後にしびれが悪化したり新たな症状が出てきたりしても追加の補償を求めることが原則としてできなくなります。保険会社は治療期間が長引くほど支払う治療費や休業損害が増えるため、比較的早い段階で示談を提案してくることがありますが、しびれのような神経症状は一進一退を繰り返しながら経過を見る必要があるものが多く、短期間で症状の見通しを判断するのは難しいものです。
示談は一度成立するとやり直しがきかない性質の合意であるため、しびれの程度や範囲、生活への影響がどのように変化しているかを継続して記録しておくことが欠かせません。通院の間隔が空いてしまうと、しびれと事故との関連性を客観的に示す資料が乏しくなり、結果として適正な等級認定や慰謝料額に結びつかない場合があります。焦って示談に応じるのではなく、症状固定の診断が下りるまでは通院を継続し、日々の体調の変化を自分でもメモに残しておくと、後の手続きで役立つことがあります。
| タイミング | 注意すべき内容 |
|---|---|
| 症状固定前 | 治療や通院を優先し、示談交渉には応じない |
| 症状固定時 | 後遺障害診断書の内容を確認し、しびれの状態を正確に反映させる |
| 症状固定後 | 後遺障害等級認定の結果を踏まえて示談交渉を進める |
6.2 後遺障害の等級認定に不服がある場合の異議申立て
後遺障害等級認定の結果が思っていたものより低かったり、非該当と判断されたりすることは珍しくありません。しびれのような自覚症状が中心となる神経症状は、画像所見などの客観的な裏付けが乏しいと判断されやすく、実際の生活への支障と認定結果にずれが生じることがあります。このような場合には、異議申立てという手続きを通じて再審査を求めることができます。
異議申立てを行う際には、最初の申請時に不足していた資料を補うことが重要になります。具体的には、しびれの範囲や強さの推移を示す記録、日常生活での支障を具体的に説明する資料、通院や施術の頻度と内容を示す記録などを新たに提出することで、症状の一貫性や継続性を示しやすくなります。一度で結果が変わらないケースもあり、再度の異議申立てや紛争処理機関への申立てといった手段を検討することもあります。ただし、손害賠償請求権には時効があるため、申立てを検討する際は時間的な余裕を持って進めることが望ましいです。
| 段階 | 主な内容 |
|---|---|
| 結果の確認 | 認定された等級と理由を確認し、不足していた点を洗い出す |
| 資料の準備 | 症状の経過や生活への影響を示す追加資料をそろえる |
| 申立ての提出 | 異議申立書と追加資料をあわせて提出する |
| 再審査 | 提出資料をもとに改めて等級の審査が行われる |
6.3 弁護士に相談するメリット
手足のしびれに関する慰謝料請求は、保険会社との交渉や後遺障害等級認定の手続きなど専門的な知識が求められる場面が多くあります。弁護士に相談することで、保険会社が用いる基準よりも高い水準となる基準に沿った慰謝料算定を求めやすくなる点は大きな利点といえます。保険会社が提示する金額は、必ずしも被害者にとって十分な水準とは限らず、交渉の余地が残されていることも少なくありません。
また、後遺障害等級認定に向けた資料の集め方や、後遺障害診断書に記載すべき内容についても助言を受けられるため、しびれの症状を正確に等級認定へ反映させやすくなります。異議申立てが必要になった場合の対応や、示談交渉のタイミングの見極めについても相談できるため、手続き全体を通じて安心して進めやすくなります。自動車保険に弁護士費用に関する特約が付いている場合は、費用面の負担を抑えながら相談できることもあるため、契約内容を一度確認しておくとよいでしょう。
しびれの症状は本人にしか分からない部分が多く、その辛さを正確に伝えることが慰謝料請求の結果にも影響します。日頃からの通院や施術の記録を積み重ねておくことに加えて、専門家の視点を取り入れることで、手続きの漏れや見落としを防ぎやすくなります。
7. まとめ
交通事故による手足のしびれは、むちうちや神経根症状、脊髄への影響などさまざまな原因から生じ、症状の程度によって12級13号や14級9号といった後遺障害等級に認定される可能性があります。適切な等級認定を受けるためには、症状固定のタイミングを見極め、後遺障害診断書に自覚症状や検査結果を漏れなく記載してもらうことが重要です。また、慰謝料や逸失利益の算定は等級によって大きく変わるため、症状固定前の示談は避け、認定結果に納得できない場合は異議申立ても検討しましょう。手続きは複雑な部分も多いため、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。何かお困りごとがありましたら当院へお問い合わせください。

